9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM 届け!
#このブログは2012年に別サイトで僕が書いたブログに加筆修正を施したモノです。
9.18ハイスタンダード AIR JAM届け!
90年代に日本のパンクシーンを牽引したバンド、Hi-STANDARD(以下、ハイスタ、ハイスタンダード)。
メンバーはベースボーカルの難波、ギターの横山、ドラムの恒岡の三人。
彼らは革ジャンやモッズファッションが当たり前だったパンクシーンに
Tシャツにスニーカーというスケーターファッションで現れた。
彼らはパンクロックにみんなで歌えるポップでキャッチーな要素を注入して俗に言うメロコアと呼ばれるジャンルを作った。
(本人達はこの名称を良く思っていない)
彼らはまだ日本において、ロックフェス、夏フェスという言葉すらなかった時代にAIR JAMというフェスを自らの手で作り上げ、成功させた。
彼らは一時制作活動に専念するためにメジャーと契約するも、99年に有限会社PIZZA OF DEATH RECORDSを設立し、横山が社長、他2人が取締役となり日本のインディーズの形を確立させた。
代表曲 STAY GOLD
- アーティスト: Hi-STANDARD,難波章浩,GOATEE,横山健
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彼らは大きくなったバンドと大きくなった会社運営と大きくなったフェスのせいで心のゆとりがなくなった。
社長を任された横山は抑鬱状態に陥り外出すら出来ないほどとなった。
難波はいつも周囲の人間に怒鳴ってばっかだった。
恒岡はそんな2人の間でオロオロしていた。
彼らは少し休む事に決めた。
せめて横山が外に出られる様になるまで休もうと決めた。
休止中、横山がBBQ CHICKENSという別のバンドを始めた。
休止中、横山が本を出版した。
横山は気分転換のつもりだった。
BIG MAC / BBQ CHICKENS
ムック 横山健 (リットーミュージック・ムック―GM special feature series)
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- アーティスト: BBQ CHICKENS
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難波がバンドを脱退した。
横山が
「会社運営を頑張ったのは俺だけ」
と周囲に漏らしてるのを聞いたのが原因だと彼は言う。
恒岡は事務所を辞めた。
ハイスタは特にアナウンスもしないまま活動休止、いや停止となった。
時は2000年。
何のアナウンスもしないまま数年が経った。
メンバー同士に接点は無く連絡先まで知らない状態となった。
2004年、横山がKen Yokoyamaという名義でソロ音源をリリースした。
そして横山はそのタイミングでハイスタが活動停止状態である事、難波が脱退した事をコラムで発表した。
その後横山はサポートメンバーとKEN BANDを結成し、数々のライブをこなした。
武道館、幕張メッセでのライブを成功させ、大きなフェスのトリまで務めた。
定期的にアルバムをリリースし、その全てをオリコンのトップ10にランクインさせた。
彼は再びロックシーンの先頭に、先頭集団に立った。
初期の代表曲 Believer
- アーティスト: Ken Yokoyama
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横山のソロデビューの直後に彼らはSSTVの周年企画で久し振りに顔を合わせた。
その時に特に今後の活動については話し合わなかったが、カメラの前で仲良さげに話している姿を披露した。
そして難波から再加入の申し入れがあった。
一応3人に戻ったハイスタだが重複するが、特に今後の活動は何も決まっていない。
その後、難波は沖縄に移り住み、自らの手でスタジオを建てた。
そこで音楽雑誌の取材を受けた。「ハイスタいつかやるよ」彼はその取材でそう語った。
しかし横山はソロで軌道に乗ってきた事もあり、「すぐに動く事はない」と同雑誌の別のインタビューで公言している。
難波はその後、違う武器を手に入れようとパンクロックから離れコンピューターを使った音楽を作った。
横山を追いかける様にソロプロジェクトを立ち上げ、デビューするもセールス的には決して成功と呼べるものではなかった。
Ghost Busterz
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「ハイスタンダードの音楽は横山のモノだった」
ファンの多くはそういう認識を持ったであろう。
この頃、難波は酒に酔うと横山やピザオブデス、更にはパンクバンド全般を批判する様な内容のブログをよくアップさせた。アップさせては削除していた。
横山は横山で「お前は嫉妬深い男だ」という内容の歌詞を書いた。
Jealous
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2007年、難波は「警告文」というタイトルのブログをアップした。
それはピザオブデスと横山に対して、ハイスタの音源の原盤権を3等分しろ、それが出来ないのなら廃盤にするべきだ、これは決して金銭の問題ではない、作品に込めた魂の話しだ、という内容のものだった。
このブログは例のごとくすぐに削除されたが、瞬く間にネット上に広まった。
当然、横山の耳にも。
横山は直後に雑誌の取材でそれを受けての気持ちを語った。
社長業を押し付けられバンドと会社運営を両立させた日々。何もしない他のメンバーへの苛立ち。
横山はまたしても難波批判とも取れる曲をリリースした。
Not Fooling Anyone
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- アーティスト: 横山健
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難波はこの件を謝罪した。自分もハイスタンダードなんだとわかって欲しかったという。
難波は横山に話し合いの場を設けて欲しいとメールで伝えた。ハイスタの今後の進退について。
しかし横山からいい返事は返って来なかった。
「解散なんてメールで決めればいいじゃないか」と一蹴された。
それから約1年。
難波は拠点を実家のある新潟に移した。
東京で事務所を設立した。
その少し前からmixiを始めた。日記で近況を色々と更新し続けた。
ドラムの恒岡とセッションした事、色んな人とコラボした事、そしてとあるチャリティーライブでギターを弾いて欲しくて久し振りに横山と電話で話した事。スケジュールの都合で断られたものの思ってた以上にフラットに話せた事を。
そして難波はソロプロジェクトではなく、難波章浩としてソロデビューする事を発表した。
レコーディングの日記を日々更新していた。
そんな彼の日記の中で1番コメント数が多かった日記がある。
それは、そのレコーディングスタジオでギターを弾く横山の写真が掲載された日記だった。
2000年に発表されたハイスタンダードの事実上最後の音源である「LOVE IS A BATTLE FIELD」以来、10年ぶりに、2人は一緒に音を出した。そしてその曲は難波のソロデビュー作に収録された。時は2010年。
この事に関して横山は特に何も発信していない。
横山がギターで参加した難波のソロ曲
JUMP!JUMP!JUMP!
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- アーティスト: Hi-STANDARD,実川俊晴,ペレティ・ヒューゴ・E,ウェイス・ジョージ・デビッド,クリエーター・ルイギー
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2010年春頃。ピザオブデスのホームページに謎のカウントダウンが表示される。
1ヶ月にも渡るそのカウントダウン。否応にも期待するファン。
しかしそれはハイスタンダード再始動を示すものではなかった。
この頃メンバーは3人ともTwitterを始める。
難波は自己紹介の欄に「ハイスタの難波」と書くも、横山は「正式に解散はしていないが気分的には『元』ハイスタのギタリスト」と書いていた。
また、難波は他2人をフォローしていたが、他2人は難波をフォローしていなかった。
この頃、難波がそれまでのデジタル路線を抑え、カバー曲ではあるがハイスタライクのファニーなパンクチューンをディズニーのオムニバスに提供している。
この曲はハイスタにあってKen Yokoyamaに無い要素が溢れている。
「ハイスタンダードの音楽は横山のモノだった」
その世間のイメージを一蹴させる難波節満載の音源に仕上がった。
これぞ、難波節
Hawaiian Roller Coaster Ride
Disney's Lilo & Stitch "Hawaiian Roller Coaster Ride" / 難波章浩 -AKIHIRO NAMBA- (Hi-STANDARD) - YouTube
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2011年。難波はavexへと移籍した。
一般イメージではあるが、商業主義の代表の様なレコード会社であり、ピザオブデスとはある意味真逆の会社である。
自分の音楽で世間を振り向かせなきゃいけない、そういう想いからプロモーションに力をいれてくれるavexに移籍を決めたという。
しかしavex所属となれば余計にハイスタンダードの再結成は遠のくのではないか。
簡単に辞められる個人事務所と違ってそれなりの契約条件があるはずだ。
長年1番再結成を望んでいだ難波がavexの所属となった。それは他とはわけが違う。
移籍直後に、原点回帰的なストレートなパンクロックアルバムをリリース。そして、全国ツアー。
avexの後ろ盾もあり、それらの活動は逐一にネットのニュースのトップ欄に表示され、難波はハイスタ以来久々に注目を浴びる事となった。
難波が再びパンクを鳴らす
MY WAY
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そしてツアー最終日、2011年3月5日。
難波はこの日のライブで「重大発表がある」と事前告知していた。
過去に何度もあった再結成の噂。
もちろん今回も色んな憶測が飛びかったが、難波はavex。たったそれだけで再結成はあり得ないと予測する者も少なくなかった。
そしてライブ後半、発表された。
「2011年9月18日 11年ぶりにAIR JAM級のフェスを開催します」
この発表はTwitterなどで一瞬にして広がった。
この日、もちろん横山からもピザオブデスからも何の発表もなし。
この日の重大発表は正式には前述の通り、
ハイスタンダードは再結成しない。
1番望んでいた難波もソロに力を入れ始めた。
ハイスタンダードは再結成しない。
3月11日。かつてない悲劇が日本を襲った。
ライブを中止するアーティスト。
西日本で泣きながらライブをするアーティスト。
音楽では人は救えないと己の無力さを痛感するアーティスト。
こんな時だからこそ現地に行ってパフォーマンスを見せみんなを笑顔にするアーティスト。
俺たちにも何かできるはずだと真剣に考えるアーティスト。
数日後、難波と横山は2ショットで肩を組んだ写真を各々のTwitterで同時にアップさせた。「GO JAPAN!」という言葉を併せて。
しつこい様だが不仲のはずの2人。
2人がこの日、同じ空間に居た。
横山がいつの間にか難波をフォローしていた。
更に翌日、難波が恒岡に「昨日は電話ありがとう」という内容のツイートを送っていた。
ハイスタンダードの3人はこの日、何かしらのコンタクトを、動きを見せた。SSTVの周年企画以来初めてハイスタンダードが動いた。
そしてそれから約1ヶ月。
各地で春フェスが中止され、節電の強化が呼び掛けられた。
難波は震災直後に9.18のいわゆる「AIR JAM級」のフェスの計画を一旦取り下げた。
各地の夏フェスも開催をするか否か検討していた。
そんな状況下の4月25日の夜、
難波がTwitterで
「明日の昼の12時に僕らの出した決断を発表します」
とアナウンスした。
そのtweetは淡々としてる様にも取れた。
最悪の事態=解散を覚悟する者もいただろう。
そして、4月26日、正午。
…の前に、
それは最早ハイスタwith布袋寅泰である。
そして、正午。
「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM 届け!!」
ついに来た!
間違いない!
某音楽雑誌編集長が「ハイスタだけは絶対にないと思ってた」という再結成の発表。
公式ホームページも何もない。
所属している会社も違う。
だけどそんな事は関係ない。
彼らはいつだって自分たちの手だけで全てを作って来た。
レコード会社もフェスもシーンも何もかも全て自分達で作り上げた。
掛け違えたボタンも自ら解き、掛け直し、わだかまりも溝も過ぎ去った時間も全てをチャラにし、彼らは11年ぶりに集まった。
日本のために。
公式ホームページが無いため、ネットのニュースでは「示唆」の文字が並ぶも本人達はお構いなしに「やる」「やる」と発言。
そして5月13日正午、
公式ホームページが立ち上がり、正式に発表された。
9月18日にハイスタンダード主催でAIR JAMが11年ぶりに開催される事。
そこでトリを務めるのが活動停止状態であったハイスタンダードである事。
そしてここでの収益を使って来年東北でAIR JAMを開催する事。
夢ではない。これは現実なのだ。
出演バンドも全てハイスタのメンバー自ら出演を依頼した。
過去のAIR JAMを盛り上げてくれた旧友。
ハイスタ無き2000年以降のラウドロックシーンを盛り上げてくれた後輩バンド。
祝福したいと来てくれた、共にアメリカツアーを回った海外のバンド。
20万人という驚異的なエントリーの中からチケットを手に出来たのはわずかに3万人。
9月18日。
プラチナチケットとなったチケットを握り、沢山の人たちが集まる。
リアルタイムでハイスタを聞いていたキッズの中に子供連れは少なくなく、当日、会場にはファミリー限定の席も用意された。
チケットを持っていないいわゆる音漏れ組も何百人と会場の周りに集まったという。
開演前、難波が自らステージにて開会宣言を行った。
元ハスキングビー磯部が新たな一歩にしましょうと「WALK」を歌う。
the HIATUS細美は「震災以降1番嬉しいニュースはハイスタの復活です」と叫ぶ。
マキシマムザホルモンはこの嬉しさをジョークを混じえつつMCにて語る。
「しかし与えられたこのステージ我々も先輩からの挑戦状だと受け止め精一杯やってやります」と宣戦布告。
かつては人気を二分し、ハイスタ無きあとのシーンをずっと支えて来たブラフマン。
2000年のAIR JAM時のハイスタの見てられない姿に怒りを露わにした事、しかし今では仕方が無い事だったとわかった事。
「俺はいつもステージで死んだって構わねぇって思いながらライブをやってる。
だけど、ちくしょー悔しいな。今日は次のバンドが見たい」
震災前まではMCを一切しないバンドだった。
震災以降、メッセージの一部としてTOSHI-LOWはMCをする様になった。
そんなMCの後に復興支援の一環としてリリースした「霹靂」を歌った。
何組かのアクトが押したため、定刻より少し遅れて、Hi-STANDARDのステージは始まった。
横山「俺たちハイスタンダードっていうんだけど、知ってる?」
難波「はじめましてって感じだよね。」
照れ臭そうにこんなジョークを交えながらも、横山が言った。
「冗談みたいに思われるかもしれないけど、笑わないでね。
俺たち日本の為に集まったんだからね。本当だって、笑わないでくれよ」
ソロに誇りを持っていた横山。
しかし彼は悔しい事ではあるがKen Yokoyamaでは届かないところまでハイスタンダードは届ける事ができるという理由でハイスタンダードの再結成に踏み切った。
アンコールで難波が言った。
「これで終わりじゃない。続けよう続けよう。キープゴーイング。」
全ての曲が終わり、三人が肩を組み、整列。記念撮影。
ハイスタンダードの再結成、そしてAIR JAM。
最早、
夢見る事さえ許されぬ程小さな小さな希望が現実となった。
2012年avexではなく、ピザオブデスからAIR JAM2011のハイスタライブがDVDでリリースされた。
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- 発売日: 2012/02/22
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そして9月、当初から再結成の目的であった東北AIR JAM2days開催。
翌年にはその模様が収められたDVDが発売。
AKBグループ、ジャニーズ勢やEXILEファミリーに混ざって年間チャートトップ10入りを記録した。
Live at TOHOKU AIR JAM 2012 [DVD]
- 出版社/メーカー: PIZZA OF DEATH RECORDS(DDD)(D)
- 発売日: 2013/09/11
- メディア: DVD
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その後目立った活動はないモノのフェスでの共演や対バン、コラボを繰り返し不仲説再浮上を覆す。
10-FEETがハイスタのカバー!
まさかのご本人登場!
- アーティスト: 10-FEET
- 出版社/メーカー: Universal Music International Ltda.
- 発売日: 2014/06/18
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そして2015年、3つのフェス、イベントに出演。
3年振りのライブ。
2016年。
相変わらず、何のアナウンスもない。
そろそろ西の方にも来る事を願います。
おわり。